FXで借金をかかえてしまった場合の解決法

投資というものは、失ってもよい余剰資金でやるというのが基本中の基本ですが、なかなかそうもいかないのも実情でしょう。副業として、あるいは家計の足しにと、虎の子の貯金を充てたり、時には借金までして相場に参戦してくる人が多くいます。

FXは何億もの資金を動かすプロと、始めたばかりの素人が、ハンデ無しでしのぎを削る情け容赦ない戦場です。当初、思い描いたシナリオ通りに事が進まず、意に反して虎の子の資金を失ってしまったり、あるいはさらなる借金を負ってしまう人が後を絶ちません。今回はFXで借金をする典型的な例と、その解決法について検証してみます。

目次

FXが借金を生みやすい理由

FXは先物取引と同じようにレバレッジをかけることができます。これがFXの魅力で人気がある理由であり、また逆に多くの人が失敗する理由でもあります。現在、レバレッジは25倍までかけられます。つまり100万円の資金で2500万円まで取引できるということで、順風満帆であれば手っ取り早く利益を上げることができますが、いざ向かい風になった場合、資金が目減りしていくのもレバレッジをかけた分だけ早くなってしまいます。

続けて利益を上げていくためには感情を殺した客観的な取引をしていく必要がありますが、「損をしたくない」という、人間のDNAに組み込まれている防御本能自体を抑制する必要があるため、参戦してきたばかりの人がそれを学び対処できるようになる前に資金を失ってしまうケースがほとんどです。

また、資金を失うだけなら全て自己責任の範疇ですから、まだいい方かもしれません。中には予期せぬ相場の嵐に巻き込まれ、資金を失う以上の借金を追ってしまう人もいます。”
時には「強制ロスカット」が機能しないことも

FXで借金を抱える理由には、大きく分けて2つあります。

1つが取引そのもので借金を作ってしまう場合です。基本的にFXでは「強制ロスカット」といって、取引中に差損が大きく発生し、預け入れた証拠金を割り込んでマイナスになる前に、証券会社側で強制的にポジションを解消する仕組みになっています。

ですが、万事においてそれが完璧に機能するわけではありません。典型的な例が、2008年9月に発生したリーマンショックや、2015年1月のスイスショックです。この時は相場が乱れに乱れたため取引レート自体がつかず、一時、取引自体が中止になってしまったのです。ここでレバレッジをかけて取引をしていた人の多くが、悲惨な結果を迎えてしまうことになりました。資金を大きく割り込み、多額の追証が発生した結果、払いきれずに借金を抱え込むことになってしまったのです。

ヘッジしない「キャリートレード」もリスクがある

また、FXの取引形態には、「売買差益」を求め積極的に売り買いしていく方法と、「キャリートレード」と言われる各通貨の政策金利差による「スワップ金利」を狙う方法があります。豪ドルやトルコリラを買って長期保有し、毎日発生するスワップ金利を狙うという取引方法は、相場に張り付く必要がないため、本業を持っている人や、せわしく売り買いしたくない人に人気があります。また、基本的に「いくら差損が発生したらやめる」という「ストップオーダー」をあまり入れないのも特徴です。

こうしたキャリートレードは、プロやベテラン投資家もやりますが、ストップオーダーを入れないリスクをヘッジするため、相反する動きを見せる通貨ペアと組み合わせるポートフォリオを組むのが普通で、豪ドルだけ、トルコリラだけ買って持っているということは、あまりありません。

ここで、もし当該国に政変、あるいはとてもネガティブなニュースが流れれば、目も当てられないことになります。基本的にキャリートレードは、少しくらい差損が発生しても、動じないでいられるようレバレッジはあまりかけないのが普通です。始めたばかりの人は「ポートフォリオでヘッジする」という仕組みも知らず、ネットで散見される「キャリートレード」に乗りハイレバレッジで取引をしたり、また運悪く重大なインシデントが発生し、資金を失ったり追証に追い込まれたりすることがあります。

「身の丈を知る」が大事

レバレッジをかけ、自己資金以上の取引ができるのがFXの魅力ですが、それに固執しすぎたり、また、それを利用して「手っ取り早く儲ける」という考え方は、ギャンブル取引の温床となりやすいだけでなく、一歩間違えば「手っ取り早く破産する」になりかねません。

「上がるか?下がるか?勝率は5割」だから、サイコロ振っても半分は勝てるという考え方ではなく、どうせ半分は負けるのだから負けた時の事を取引前にシナリオに入れておくというのが、プロやベテランの考え方です。そして負けた時に感情的にならなくて済むレバレッジで取引しておくことも重要です。

プロやベテランにしても、初めからそれができたわけではありません。高い授業料を相場に払い、身を削って学んだ痛い教訓です。怪しい気配を察して、潔く負けを認め身を引くことも継続して勝っていくためには重要な戦術です。ですから、それができるようになるまでは、レバレッジのことは考えない方がいいでしょう。

そもそも借金をして資金を作った場合

FXで借金を抱える理由その2は、そもそもFXの資金を借金をして作った場合です。残念ながらネットには「10万円が1000万円になった」という類の成功話があふれているため、それを信じて実行する人が後を絶ちません。

百戦錬磨のベテランであればまだしも、昨日今日はじめたような人がこれをやるのは、もう戦う前から結果が見えているようなものです。さらに、その借金もFXで勝って返済するつもりであれば毎月、必ず利益を出すことが必定となり無理な取引をしがちになります。

何億もの資金を動かすインターバンクトレーダーのようなプロに対する個人投資家の唯一の強みは、「無理に取引をしなくてもよい」ことです。かれらプロトレーダーは「取引をしないこと」は「さぼっている」の同義語ですから、相場が動かなくても、とにかく取引をしなくてはいけません。

一方、個人投資家は「無理をして取引をする必要がない」ため、セオリー通り動いている勝率が高い環境の時、相場に乗ればいいのです。これが、圧倒的に少ない資金量の個人トレーダーが生き残るために利用すべき重要な戦術です。そのため、月によって収益にばらつきが出たりしますが、そのことに右往左往せず、1年を通してプラスになっていることが肝要であるという考え方が大切です。

初めから借金を負っているということは、この考え方とは相反するため、日々の利益を追い求めがちになり、所詮、プロのスキルには及ばないわけですから、無理な取引をして墓穴を掘りやすくなります。

結局、初めから「負のスパイラル」に陥っているため、継続して勝つために必須である客観的で冷静な判断ができなくなっているケースがほとんどです。

要するに「戦う前から負けている状態です。それでも勝ったり負けたりしながらなんとかやりくりできている「自転車操業状態」なら御の字で、マイナス分を補填するために、さらに借金をする「借金がさらなる借金を生む」ようになるケースも多くみられます。そうなると「うまく行かなかった穴埋めに借金をしている」わけですから、その繰り返しになりやすく、「負のスパイラル」が口を開けて待っています。

まとめ

「うちのおじいさんはヘビースモーカだったけど100歳まで生きた」、喫煙が体に悪いという医学的な所見も出ている中、FXも含め、全てにおいてこうした例外的な人がいることも事実です。

ですから、「FXで作った借金をFXで返した」人もいるでしょう。それどころか巨万を富を築いた人もいるかもしれません。しかし、それが自分に当てはまる確率は「相場が上がるか?下がるか?は5割」より、はるかに低いのも事実です。

考え方は人それぞれですが、やはり「FXで作った借金をFXで返す」という考え方は危険であると言わざるを得ません。まず、第一の理由が上述した「戦う前から負けている」精神状態であることです。そして「つねに追い詰められたような心境」、これはとてもストレスになりますし、第一、毎日の生活が楽しくありません。

ですから、FXで借金を抱えてしまい、自分だけで解決が難しい場合には、いちど専門家に相談するなど、詳しい人の所見を仰ぐことも必要です。そして、一度、借金をリセットして再スタートすることを目標に、生活を立て直すことも大切でしょう。

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