質屋でお金を借りるのは担保さえあれば簡単だが、担保を失うリスクももちろんある

会社や個人からお金を借りようとする場合、その対象は銀行、クレジットカード会社、消費者金融、家族、親戚、友人というのがほとんどでしょう。

しかしながら、お金を借りられる相手はそれだけではありません。質屋でもお金を借りることができます。担保があれば審査不要なので、貸金業者から借り入れできなくなった場合の借入先として有力な候補といえるでしょう。

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審査不要でお金を貸してくれ、返済しなくても取り立てがない

現代社会において、質屋は銀行や消費者金融と比べるとそれほど身近な存在とはいえません。テレビコマーシャルをよく放送している銀行や消費者金融と違い、質屋は目立った宣伝活動をあまりしていませんし、数自体、銀行の支店に比べれば少ないです。そのため、質屋でお金を借りられることを知らないという人もいるでしょう。また、借りられることは知っていても、借り方がわからないという人も多くいるかもしれません。

質屋でお金を借りるためにはどうすればいいのかというと、担保になるものと身分証明書を持っていくというのが基本になります。担保というのは金銭的な価値を持つもののことで、貴金属、ブランド品などが代表的なものです。質屋では銀行や消費者金融のように、職場がどこで、年収はいくらといった個人情報を提出する必要はありませんが、それでも身分証明書だけは求められる理由として、盗品が担保として持ち込まれる可能性が挙げられます。

その場合、警察の捜査に協力する必要があるので、原則として身分を証明することができない人から担保を預かり、お金を貸すことはないのです。

担保を持っていくと、店主がその担保の価値を算出し、融資可能な金額を客に伝えます。場合によっては、店主が「いくら借りたいのか」と客に尋ね、客が答えた金額に納得したら貸すということもあります。そのため、担保の価値を大きく上回る金額を借りられることはまずありません。たとえば、市場価値が10万円しかないブランド物の時計を持ち込んだ場合、それで20万円を貸してほしいと頼んでも店主がOKしてくれることはないでしょう。

店主と客が折り合うと、店主は担保を預かり、客にお金を貸します。このとき、紙でできたカードを渡されることが一般的です。このカードは質札と呼ばれ、返済期限、金利、お金の振込先などが書かれています。

返済期限はお金を借りてから三ヶ月後に訪れますが、このとき、元金と利息をあわせて返済することができなくても、利息だけ支払えば返済期限を三ヶ月延長することが可能です。つまり、三ヶ月ごとに利息のみを返済し、ずっと元金を返さないこともできるのです。また、三ヶ月後、利息さえ返さなかった場合は質屋に担保を取られることになります。

これは「質流れ」と呼ばれ、質屋は担保を販売することで融資した分のお金の回収をはかるのです。もし、客に10万円を貸して、利息すら返済してもらえなかったとしても、客から得た担保を15万円で販売し、それが売れれば差し引き5万円の利益を得ることができます。

質流れのシステムは客にとってもメリットがあります。それは、借りたお金を返済できなくても取り立てされることがないという点です。質屋によっては、「このまま利息すら返済しないと質流れになってしまう」という警告書をはがきで何度か送ってくることはありますが、それを無視しても裁判で訴えられることはありません。

多重債務の利息返済を質屋から借りたお金で行うのは「焼け石に水」の可能性も

借りたお金を一切返さなくていいというのは大きな魅力で、銀行や消費者金融よりも、質屋でお金を借りる方がいいのではないかと考える人もいるでしょう。しかし、デメリットも存在します。

まず挙げられるのが、金利の高さです。質屋からお金を借りる場合に設定される金利は融資金額によって異なりますが、一例を挙げると、10万円借りた場合は月利5パーセント程度の金利になります。この場合、一ヶ月で発生する金利は5000円です。一般的なカードローンの場合、10万円の融資に設定される金利は年利15パーセント前後で、一ヶ月で発生する金利は1200円前後ということになります。つまり、カードローンと比べると、質屋は毎月4倍程度の利息が発生し、それを返さないといけないことになるのです。

ただ、お金を借りたあと、一回も返済せずに質流れにすることもできるので、その場合は高い利息も払う必要はありません。このケースであれば得に思えるかもしれませんが、質屋が融資する金額は担保の市場価格を上回ることはまずないので、ネットオークションなどで処分した場合に得られるよりも少ない金額しか借りられず、結果的に損をしてしまうこともあり得ます。

上記のような理由から、質屋でお金を借りる場合はケースを限定した方がいいでしょう。たとえば、数日後にカードローンの返済期日がくるものの、用意できるお金が返済金額に満たないといったケースです。こういうケースでは、別のカードローン会社から新たにお金を借りて、それを返済に回すという手段を用いる人が少なくないですが、多重債務になってしまいます。

また、カードローンの借金を別のカードローンからのキャッシングで支払うということを毎月繰り返していると、最終的に借入先が七社にも八社にもなってしまい、完全に行き詰まってしまうことになりかねず危険です。

質屋であれば、所有しているものをすぐに現金化することが可能であり、返済期日まで時間がなくても間に合いますし、また質流れにすることを前提にしているのであれば多重債務も回避できます。

反対に、質屋からお金を借りることに向いていないケースとして挙げられるのは、たとえば、多重債務の利息を支払えないので、大事なものを担保にしてお金を借りるというものです。

近い将来、確実に収入が増え、多重債務を自力で返済していけるめどが立っているのであれば、一時しのぎに質屋を利用するのはありといえますが、まったく返済のめどが立っていないのであれば、当然、担保を取り戻すこともできず、最終的に借金はそのまま残り、大事なものは失ってしまうことになります。

返済のめどはまったく立っておらず、返済や、返済の遅れにともなう督促からとにかく逃れたいという一心で、思い出の品物や親の形見、あるいは生活必需品などを質屋に入れてお金を借りるのであれば、思い切って債務整理を行った方がいいでしょう。自己破産の場合は、金銭的に価値のあるものは回収されてしまうかもしれませんが、任意整理であれば確実に残すことができます。

また、自己破産であっても一部の財産は残すことが可能です。たとえば、テレビやエアコンといったものは生活必需品として使用が認められます。具体的にどれが処分されて、どれを残すことができるのかというのは、ケースバイケースの部分もあるので弁護士に相談してみるといいでしょう。

まとめ

面倒な審査がない、すぐに現金を手にできるという点で、質屋はとても便利な貸金業者といえますが、手持ちの物を担保にお金を借りるということは、それを失う可能性があるということを忘れてはなりません。希少価値の高いものは、仮に生活の改善に成功したとしても買い戻せない可能性は十分あります。

大事なものを担保にお金を借りないといけないという状況に追い込まれた場合、果たして、そのままお金を借りるのが今後の自分にとっていいことなのか、よく考えるようにしましょう。

すべてのものを現金化して返済に充て、どうにもならなくなって債務整理を行うよりは、財産をある程度残した状況で行った方が生活の立て直しはスムーズです。

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