自己破産の作文はどう書けばいいか

自己破産は借金を全額免除してもらうための手続きです。裁判所に申立てを行うときは陳述書を提出する必要があり、その中には作文が必要になる項目があります。この作文の内容によって自己破産が認められるかどうかが決まるので、手を抜かずにしっかりと記述する必要があるのです。具体的にどのような点に気を付けて書けばいいのか確認しておきましょう。

目次

内容は何を書くのか

自己破産の申立てを行うときは、申立書の他に、自己破産に至った経緯を記載した陳述書を提出しなければなりません。これは借金が返せなくなってしまった経緯を説明するための書類で、債務整理の中では自己破産手続きのみ提出が求められます。

自己破産を申し立てる最大の目的は、免責を受けることで借金をゼロにしてもらうことです。免責が受けられるかどうかは裁判官の判断にかかっていますが、その判断の重要な材料になるのがこの陳述書なのです。そのため、手を抜くことなくしっかりと記述していく必要があります。

陳述書の書式は裁判所によって違いますが、必要項目については予めひな形が設定されており、選択肢や記載項目の指示に従って記入できるようになっています。

しかし「破産申し立てに至った事情」は別です。この部分は定形方式に従って記入するのではなく、借金をし始めたときから破産申し立てに至るまでの生活の移り変わりを、自分の言葉で書かなければなりません。これがいわゆる「作文」です。申立書の中でも最も重要な項目の一つで、裁判官はこの項目を確認し、免責するかどうかを決定します。

作文は「どのような事情で借金をすることになったのか」「なぜ返済が困難となったか」「どのような経緯で自己破産を選択するに至ったか」「現状をどのように考え反省しているか、将来的にどのような行動を取るつもりか」といった流れで記載していきます。現状に至るまでの経緯を裁判官に理解してもらえるように書いていくことが大切になります。

裁判官だけではなく、債権者にとっても作文は重大な関心ごとです。自己破産によって債権者は債権を失ってしまうからです。それだけに、しっかりとした内容のものを作成する必要があります。

作文の分量は、各裁判所が用意した記述スペースを使い切るように書かなければなりません。およそA4用紙2枚分、約1200文字程度は書く必要があります。少なすぎると裁判官にこちらの考えが伝わりません。しかし文字数稼ぎでダラダラと書くのも問題です。要点をまとめてバランスよく書いていくことが大切になります。文章を書くのが苦手で1200文字書き切る自信がないなら、弁護士などの専門家に依頼して内容をチェックしてもらうようにしましょう。

作文で一番大切なこと

陳述書や作文を書くときに一番大切なのは、嘘を書かないことです。裁判官は陳述書や作文の内容、そして後に行われる個人審尋で、債務者が自己破産に至った理由は何か、現状を反省し将来の生活を立て直していこうという姿勢を持っているかを判断します。

しかし陳述書や作文で嘘を書いていると、記載内容や個人審尋で矛盾が生じてしまいます。すると裁判官は「反省していないし、真剣に行動していない」「何か隠している財産があるのでは」と疑いを持つようになってしまいます。仮に嘘を書いたつもりはなくても、矛盾が生じれば当然裁判官の心証は悪くなります。そうなれば最悪免責不許可となる可能性もあるのです。

ありがちなのが、ギャンブルや賭博で作った借金であることを隠し、体のいい原因を書き連ねるというものです。債務者は「ギャンブルで作った借金だと印象が悪い」と思って嘘を書いてしまうのですが、裁判官は専門家です。

作文で嘘を書いても他の事実や要素と比較すればすぐ矛盾に気付いてしまいます。一見してマイナスに評価される原因であっても、嘘偽りなく書くことが大切です。心から反省していることをしっかりと伝えることができれば、心証は下がりません。嘘を書くことの方がよほど危険なのです。

準備する物と具体的な内容

作文を書くときは、債権者一覧表の内容と記載内容を一致させる必要があります。債権者一覧表は自己破産に限らず、債務整理を行うときは必ず必要になる書類です。業者や個人に関わらず借りている先の会社名や個人名、借金期間、残債などが記されています。

債権者一覧は申立書に添付する必要があるので、手続き準備を進める中で必ず作成することになります。作文を書くときは、一覧表にある債権者名や借入金額、借入日付、返済額、返済日付、残債額などを登場させ、関係性を記載しなければなりません。

裁判官は作文と一覧表を見比べるので、内容は必ず一致させておく必要があります。間違っていると補正が命じられることになります。あまりに不一致が大きい場合は、それが故意でなくとも裁判官の心証が下がってしまうため注意が必要です。

作文は時系列に沿って書いていくことになります。まずは「借金し始めた理由」です。「ギャンブルの軍資金のため」「他人の連帯保証人になり、その返済のため」など具体的な理由を記入することになります。この時点では十分返済していけると考えていたことになります。最初に借りた貸金業者はどこなのか、金額や時期も併せて正確に記入します。個人から借りた場合はその人の氏名を記入しましょう。

次に「多重債務に陥った経緯」を書くことになります。最初の借金だけで終わらず追加で借金することになった理由を書きましょう。「ギャンブルで負けた分はギャンブルで返す、と安易な気持ちで借金を重ねた」「生活苦に陥り更に借金が必要になった」といった書き方になります。この時点でどう行動すべきだったか、反省点も述べておきましょう。

3つ目は「自己破産を選んだ理由」です。債務整理には自己破産の他に任意整理や個人再生などの手段があります。その中で最も効果が大きい自己破産を選んだのは何故なのか、具体的に記しましょう。免責による借金の帳消しが目的という人が多いですが、それだけではなく「現在収入がなく他の方法では生活を立て直すことができない」「精神的な病気があり治療に専念しなければならない」など、細かい理由も記入するようにします。

最後に「自己破産することに対する反省、将来の展望」を書きます。自己破産は法律で定められた権利ですが、債権者に損害を与える行為でもあります。そのことに対して反省していることをはっきりと述べなければなりません。更に今後生活をどのように立て直していくつもりであるか記述しましょう。「借金に頼らない生活を送って金銭感覚を立て直す」ことを前提に「家計簿を付ける」「貯蓄を始めたい」など、具体的な行動を記すとより高評価となります。

押さえておきたいコツ

作文は時系列に沿って書いていくことになりますが、一連の流れで書くのが難しいときは、箇条書きで書いても問題ありません。自分の書きやすい形で、より裁判官に伝わりやすいように書き方を工夫していきましょう。項目分けも、適切に行うと分かりやすい文章になります。

嘘は厳禁ですが、相手に与える印象が良くなるように文章を整理することも必要です。書き方を工夫したり言い回しを変えたりして、できるだけ工夫するようにしましょう。

自己破産に至る経緯を文章にすることは非常に辛いことです。辛い経験を思い起こして正確に書いていかなければなりませんし、弁護士などに代筆を頼むこともできません。しかしこの工程を乗り越えなければ次のステップには進めません。生活を立て直すための試練だと考え、途中で投げ出したり適当に済ませたりしないよう覚悟することが必要になります。

まとめ

作文は免責が受けられるかどうか決まる非常に重要な要素です。手を抜かずに書くことはもちろんですが、できるだけ弁護士などの専門家に内容を確認してもらうようにしましょう。自己チェックには限界がありますし、内容に予期せぬ矛盾が生じていても、この段階であれば修正することが可能だからです。

免責が受けられるような内容を目指しましょう。

(Visited 16 times, 1 visits today)