過払い金請求の基礎知識・【要診断】払い過ぎた金利がある場合に取り戻す手続き方法について
CMなどでも目にすることの多い過払い金は、現時点で借金がある人にとっては興味深い内容です。大まかにいうと、借金があるように見えていた借り入れが、実際には払い過ぎになっており、請求すれば取り戻せるというものです。しかし、過払い金について気になってはいても、自分が該当するのかも分からないために放置している人も少なくありません。そこでこちらでは、過払い金が出そうなケースや手続き、費用など、多くの人が気になっていることについてご紹介していきます。
目次
なぜ過払い金が発生するか
そもそも、なぜ借金がたくさん残っているように見えるにもかかわらず、過払い金が発生しているのでしょうか。そのきっかけとなったのは、2010年に施行された改正貸金業法という法律です。この法律で、キャッシングやカードローンを利用した時の金利の上限は、利息制限法を基準にするということが明確になりました。具体的には、10万円までの借金に関しては年20%、それ以上100万円までの借金では年18%、100万円以上については年15%を超える金利を請求してはならないということになったのです。また、一度借入残高がこれらの金額を上回った場合には、下がった利率が継続されます。つまり、最初に100万円を借りてすぐに90万円返し、借入残高が10万円のみとなったときの利息の上限は、年18%ではなく15%になるのです。
この法律が施行されるまでは、キャッシング等の利息については、上記のとおりの利息制限法による利率を上限とするのか、貸金業法による利率を上限とするのかで判断が分かれていました。貸金業法による金利は年29.2%となっており、利息制限法の利率よりもはるかに高くなります。この、利息制限法の上限から貸金業法の上限までの間の利率を、一般的にグレーゾーン金利といいます。貸金業者からしてみれば、利率が高い方が収益も増えることになりますので、多くの業者が貸金業法を基にした融資を行っていました。利率が高いために返済の大部分が利息に充当され、元本がほとんど減らず、まじめに返し続けても借金がなかなか減らないという人も多かったのです。そのため、貸金業法で借入をした人の多くは、返済のために借入を繰り返し、それでも借金がなかなか減らないため、長期的に取引をしていました。
改正貸金業法が施行されてからは、2010年以前の取引についても全て、利息制限法の金利を上限と設定し直さなければならなくなりました。つまり、改正貸金業法が施行される以前から借り入れをしていた人については、最初の取引までさかのぼって利息制限法の金利で計算し直し、最終的な借金の残高を確定することができるようになったのです。ただし、これは何もしなくても自動的に再計算されるというものではありません。
貸金業者側は、法定利息を超える部分は債務者が任意に払っていたと認識していたため、請求されない限りは返済する必要がないという言い分を主張してくるためです。そこで、過払い金の可能性がある取引については、契約当初から現在までの取引を、全て利息制限法の利息で引き直し計算し、実際に過払い金があれば業者に改めて請求する必要があります。仮に過払いが発生していないとしても、利息を超える部分を元金に充当したことにより、借入残高が大幅に減額されることも珍しくありません。その場合には、引き直し後の借金について一括、もしくは分割で返済することで、長く継続していた取引を終わらせることができます。
過払い金が出る可能性が高いケース
借入残高を利息の差額のみで返済し、過払い金が発生するまでには、ある程度まとまった期間が必要です。借入や返済の仕方、取引期間、きちんと返済していたかなどの個別の条件によって結果は大きく異なりますので、引き直し計算をするまでは過払いが出るとは断言できません。ただ、一般的な目安としては、2010年以前からの取引があり、継続して6年以上払い続けている場合には、過払いが発生している可能性が高いといわれています。とはいえ、改正貸金業法の施行直前には、多くの消費者金融が先んじて利息制限法の上限金利に変更したため、2009年に開始した取引でも過払い金になっていないケースも見られます。また、継続しているというところが重要で、同じ業者からの借入であっても、一度完済してから借り直した場合には、それぞれ個別の取引として扱われるケースもあるため要注意です。過払い金の返還を請求できる期間には限りがあって、最終取引から10年が経過すると時効になります。例えば、同じ業者で12年前に一度完済して、その後再び取引を始めた時の借金が今も残っているという場合には、12年前に完済した取引については時効となるため、過払い金請求ができません。
過払い金や借金の減額があるのかを知る方法としては、借入申し込みをした時の契約書を見るのが最も確実です。契約書に記載されている利率が利息制限法を上回っていれば、少なくとも減額にはなるでしょう。ただし、借金をしてから全く返済をしていないようなケースでは、当然借金の額は増えています。約定の日にきちんと返済しなかった場合、利息ではなく遅延損害金として、さらに高い利率で残高が膨らむのです。
また、取引期間からも推察できます。2010年よりも数年以上前から借入をしている時には、契約書を見るまでもなく、高利で借入をしている可能性が高いです。加えて、取引期間が長くなるほど利息超過分を元本に充当する期間も増えていきますので、過払い額が膨らみやすいです。実際、20年近く取引を続けてきた人の場合には、借金が100万円単位残っているように見えたにもかかわらず、利息の引き直し計算をすると借金とほぼ同額の過払い金になったという結果もあります。
借入をした時期があやふやで、契約書等の書類も破棄してしまったという場合には、自分で引き直し計算をするしかありません。といっても、契約当初からこれまでの取引履歴を保管している人というのはほぼ皆無ですので、貸金業者に請求することになります。貸金業者は、利用者から取引履歴の開示を求められたときはすぐに開示しなければならないため、理由などは聞かれても断られることはありません。ただし、利息制限法の利息に引き直すまではしてくれませんので、自分で取引ごとに引き直しソフトなどに入力して、計算する必要があります。
過払い金の取り戻し方
過払い金を取り戻すときは、弁護士や司法書士などの法律行為を代行する専門家に依頼することもできますし、自分で手続きをすることもできます。流れとしては、まず、過払い金の額を確定しなければならないため、借入先の業者に履歴の開示を求めます。過払いや減額の可能性がある業者に対しては、すべて一度引き直しをしておいた方がよいでしょう。なお、現在取引が続いている業者だけでなく、既に完済している業者でも、完済したのが10年以上前でなければ対象となります。簡単な書面や電話で請求できますが、用途について聞かれることはあるでしょう。ここで注意しておきたいのが、取引履歴を請求するのは貸金業者だけということです。銀行などでカードローンを利用していても、金融機関のローンは利息制限法を大幅に下回る低利率で貸し出しているため、長期間利用しても過払いや減額になることはありません。
取引履歴は、大体1週間~1ヶ月後に郵送で手元に届きます。届いたら、利息引き直し計算専用のソフトを使って、契約当初から現在までの取引をすべて入力していきます。その際、完済してから1年以上たち、再契約している場合には、同じ債権者でも別々の取引としてファイルを作っておいた方がよいでしょう。入力が終わったら、計算自体はソフトが自動で行います。減額になっていたら業者に連絡したうえで残りの借金を返済し、過払い金が出ている時は、これを先方に請求するという流れです。
過払い金が発生しており、金額が確定した場合には、借入先の業者に対して過払い金請求を行います。先方に話をせずにいきなり訴訟をするという人もいますが、金額が少ない場合や早期解決を目指している場合などは、時間のかかる訴訟ではなく、任意の話し合いを求めがちです。任意での話し合いの場合、消費者金融は過払い金の存在は認めても、全額の返済には頷かないところがほとんどです。そのため、任意で話し合いをするときには、どこまでなら妥協してよいかというラインをあらかじめ決めておくとよいでしょう。大手の業者ならば7~8割の返還に応じることも多いですが、規模が小さい業者にとっては、一気にまとまった資金を回収されるのは避けたいところです。そこで、5~6割の返還を提示してくる代わりに、早めの返済にするといった条件を持ち出してきます。中小規模の業者の場合、回収額にばかりこだわって受け取り時期を先延ばしにすると、会社自体が倒産して1円も取り戻せないというリスクもありますので、臨機応変に対応しましょう。
任意での和解金に納得できない場合には、訴訟を起こすことになります。訴状の雛形は裁判所でもらえますが、文章の書き方や添付書類などが分かりにくいうえ、本格的に裁判になったら月に1度のペースで法廷に出なければならないため、専門家に依頼する人がほとんどです。訴訟になると、任意の話し合いよりも高い割合の返還が期待できますが、全額回収しようと思ったら判決まで争うこともあります。
過払い金はいくらくらい戻ってくるのか
過払い金がどれくらい戻ってくるかは、借入金額や取引期間などによって大きく異なります。また、手続きの内容等によっても最終的な受取額は変わってくるため、多少は幅があると考えておきましょう。通常は、10万円前後程度の少額の過払いであれば、訴訟の手間や費用の負担を考慮して、任意の話し合いで解決します。そのため、仮に10万円の過払いがあったときには6~7万円程度が目安です。一方、100万円を超える高額の過払いになったときは、満額に近い金額の取り戻しを目指して訴訟をすることが多いです。
訴訟になったとしても、判決までお互いが争うこともあれば、途中でお互いに妥協して、任意での話し合いの時のように減額して早期解決になることもあります。訴訟上の和解は、話し合いによる解決といっても回収率が高くなります。これは、貸金業者の内部で、任意の話し合いの時と訴訟になった時の決済が下りる金額が異なるためです。裁判まで行ったときには、任意では6~7割しか回収できなかったものが、8~9割の回収も期待できます。最初から和解前提の訴訟にする場合には、訴状を出してから期日を決めず、まずは業者と話し合いを行い、和解案がまとまったらその結果を裁判所に報告します。そのため、裁判所にほとんど出かけずに解決することもあるのです。判決まで争ったときには全額の回収も可能ですが、貸金業者が高等裁判所に控訴することや、判決に応じずに差し押さえをせざるを得ないこともありますので、費用や回収までの時間が長引くことも考慮しておきましょう。
過払い金を回収できたとしても、全額自分の手元に残るわけではありません。任意整理を自分でしたときには費用は発生しませんが、裁判にしたときには、印紙代や切手代などが出ています。また、専門家に手続きを依頼した場合には、手続きの内容や回収できた金額に応じて報酬が発生するため、手元に残る金額は当初の予定とずいぶん異なります。専門家の費用は、訴訟などでかかった実費の他に、各事務所で定めている報酬規程によって算出されます。事務所によって違いはありますが、任意整理の場合には一社あたり2~5万円程度、訴訟になると回収額の8~10%程度を目安にしておくとよいでしょう。専門家に依頼する前に費用の見積もりを出してもらうこともできるため、回収見込み額や支払予定の報酬などを考えてから方針を決めることも可能です。もちろん、過払い額が決定した後も、任意整理の場合と訴訟の場合で見積もりを出してもらえます。なお、相談料に関しては無料のところも多いです。
まとめ
このように、過払い金は計算してみなければわからないところが多いですし、期待外れにならないという保証はありません。しかし、少なくとも今よりも借入残高が増えることはありませんし、試してみる価値は十分にあります。まずは当時の契約書の利率をチェックしたり、履歴の開示を求めたりしてはいかがでしょうか。